配当型ウォレットの裏に在るドス黒いもの

 配当型ウォレットに参加する人が増える一方で、配当に入る資金がどこから流れてくるのか疑問に思う人も多いのではないだろうか?

MLM(マルチレベルマーケティング) !?

 突然言われても、ピンとこない人が大半かと思う。MLM(マルチレベルマーケティング)≒ネズミ講であり、新規参入者からの資金を利用して、配当を出し続けているという理論だ。

一見するともっともらしい理論にも見える。

 しかし運営側は新規参入者が支出を上回った時点で高配当を出し続けるのが困難となる。そのため資金を集める手段としては使えるが、長期的に見た場合には徐々に”高利率の配当”が足かせとなる。

つまり配当型ウォレットの運営側は長期的な視野は持っておらず、目的を達成することに特化した、短期的な資金回収方法として考えている可能性がある。

 そもそも逮捕されるリスクまで犯して、 資金を大量に集める目的とは何だろうか?

今回、配当型ウォレットについて、「資金源や運営側の目的」について解説する。

◇ 配当型ウォレットが流行る理由

  仮想通貨が大々的に注目されたのは、2016~2017年にかけてのビットコインの大幅な高騰時だ[図1]。
 当時、ビットコイン価格は何十倍にもなり多数の億り人(億単位で稼ぐ人)が多数出現したのは記憶に新しい。
しかしその後の価格推移をみても、2017年の最高値を越えれず、価格は下落したままだ。そこで2018年付近から出現してきたのが「配当型ウォレット」だ。

ビットコイン価格_すべて
図1. BTC価格の推移(2009~2019)

 仮想通貨を始める新規参入者は増える一方で、相場は下降トレンドである。下落時に損切できないユーザーの心理状態としては、仮想通貨で儲けるはずが、塩漬け状態となることに焦りが出る。
 そのため仮想通貨を運用して稼げる方法がないか検索すると、いつしか配当型ウォレットに行き着く。配当型ウォレットの詳しい説明は別の機会にするが、”なぜ配当型ウォレットが流行る”のか?
答えは明快であり”せっかく始めた仮想通貨で儲けたい”という、人間心理を上手く使っている。
 
 仮想通貨は通貨の概念を変える可能性のある「希望」である。一方で、各国で法律整備が追い付かないこと、 また法廷通貨(円やドル, ユーロなど)を脅かす存在であるため、法律上グレーであり大々的な宣伝が出来ない状況にある。
そのため、仮想通貨の持つ「闇」の部分が配当型ウォレットと言える。  

配当型ウォレットの運営側の目的としては以下2つが重要となる。

配当型ウォレットの運営側の目的
1.仮想通貨プロジェクトの資金集め
2.盗まれた仮想通貨の資金洗浄(マネーロンダリング)

1.仮想通貨プロジェクトのための資金集め

  株や債券であれば、会社の素性や決算内容を細かくチェックする人が大多数である。配当型ウォレットでは、情報が公開されている内容が僅かで、運営側の素性が分からなくても、プロジェクトに対する期待や、ウォレットの配当利率だけで多くの個人投資家から資金を集めることが出来る。

ある企業や個人が、仮想通貨を使用したプロジェクトを立ち上げたくても、大手の金融機関から資金提供を受けることが困難である。反面、仮想通貨であれば出金・送金が国を超えて簡単に行えること、主要な金融機関でなくても気軽にアプリを立ち上げれば大量の資金を”個人”から集めることが出来る点など、クラウドファンディングよりも簡単に大量の資金を集めることが可能なため、闇を育てる土壌もできてしまっている。


 仮想通貨プロジェクトもピンキリであり、実態のあるプロジェクトのために資金を必要とする企業もある一方で、実態もなく成功する見通しのないプロジェクトでさえ資金を集めることが可能となっている。個人的には莫大な資金があればアルトコインなど市場規模の小さい銘柄の相場操作により、大きく儲けること可能だと考えている。

2.盗まれた仮想通貨の資金洗浄

 仮想通貨取引所からハッキング件数は2~6件程度は年間で発生している[CoinChoice参照]。

表1. ハッキング被害のあった取引所(年度別)

現金などの窃盗事件などと比較して件数そのものは少ないが、金額ベースで見ると、仮想通貨の価格高騰に伴い右肩上がりに上昇している[図1]。

図1. 仮想通貨のハッキング被害額

2014年以降では年間で100億円ベースで仮想通貨がハッキング被害にあっている計算となる。ハッキング被害は、法定通貨では考えられないほどの経済的損失を受けている。

では年間あたり数百憶円もの盗まれた仮想通貨はどこへ行くのだろうか?  

 組織やハッカー達が莫大な仮想通貨を手に入れても、そのまま資金を使用すれば跡(ログ)が残こる。そこで考えられるが、配当型ウォレットを資金洗浄の手段にすることだ。
 配当型ウォレットでは簡便かつ匿名性を持たせて、個人投資家から綺麗な大量のお金を集めることが出来る。また個人投資家達は高利率の配当を貰えることから、莫大な資金が流入する。運営側も組織やハッカーたちを上手に取り込むことで、恰好の資金洗浄を行う場となる。

結論

 のケースでは、 配当型ウォレットを運用する側としても、本来はプロジェクトを成功させたい。しかし不運にも新規ユーザーの参入が少なくなり、古参ユーザーの離反が起こると、すぐに資金収集が困難となり破綻する。この場合には運用を継続してプロジェクトを達成したいが、結果的にエコシステムの破綻が起こる。いわゆる配当型ウォレットが”飛んだ”状態だ。

 のケースでは、そもそも組織やハッカー達の資金が決められており、すべての資金洗浄が行わされた時点でウォレットは不要となる。そのため、運営側としても決められた期間で、ウォレットからフェードアウトしている。

 政府側が仮想通貨に関する法整備やセキュリティーの強化により、「闇」は多少減ると考えられるが、まだまだ先の話であり、配当型ウォレットへの関心は続きそうだ。

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