Amazonが直接納税する裏の意図:変わる働き方

Gig Economy(ギグエコノミー)

 ギグエコノミーとは、「インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態」をさす。 (Gig:ジャズなど音楽演奏で一度きりのセッションを意味する)

 発注側の企業にリスクはなく、受注側の個人がリスクを全て負担する。配達個数ごとのに単価が決められており、日本では1個届150円程とされる。もし配り切れない場合、契約によりペナルティーがある。 配達時にはGPSでトラッキングされる場合もあり、配達効率を求められる。 1番の問題は”車の調達から燃料費、保険代やメンテナンス費も全て個人が負担する”ことだ。もし事故を起こしても、誰も守ってはくれない。

 イギリスでもギグエコノミーが問題となっており、ケン・ローチ監督の「家族を想うとき」(2019年12月13日公開)では、労働者階級のリアルな実態を映画化している[動画1]。 邦題(家族を想うとき)からは、感動する家族ドラマを連想するが、原題は異なる。

原題は”Sorry We Missed You “であり 、訳せば「ご不在につき失礼」である。留守の時にポストに投函されている「不在届け票」を意味する。

英語圏で使用される「不在通知票」 ”Sorry We Missed You “


 イギリスでも家主が不在時は通知を入れて、再配達が必要となる。配達員たちは日々の配達期限とノルマに追われ、肉体的にも精神的にも疲弊していく。

 実際に日本でも、Uber EATSのパートナーシップにおいて、「企業側による一方的な賃金の切り下げ」が問題となった[動画2]。メディアや広告では、頑張って働いた時の報酬(賃金)ばかり誇張されるが、安全性や保険、賃金保障の面では守ってくれる組織がないため、労働者の立場は弱まるばかりである。

 このように働き方さえ企業側が有利なように「巨大企業に資金(権力)が集中する現象」はアメリカでも問題視されている。これに真っ向から対抗姿勢を見せているのがエリザベス・ウォーレン氏だ。

  

動画1. ケン・ローチ監督「家族を想うとき」 (原題:Sorry We Missed You)
動画2. Uber Eats 配達員の賃金引下げ (TBSニュース)


 

2.アメリカ大統領選挙(2020年)

  エリザベス・ウォーレン氏は、民主党所属の上院議員であり、ドナルド・トランプ大統領の最大のライバルとされる。彼女は積極的な消費者保護論者であり、経歴としては2008年の金融危機の際に”不良資産救済プログラム(TARP)”の議長として手腕を発揮している。 特に注目されるのが、 選挙公約とされる「GAFA分割」だ。
 

エリザベス・ウォーレン上院議員(NHK NEWS WEB)

 ”GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)分割”とは、「巨大IT企業を何社かに分割し、資本・プラットフォームの一極集中を避けることで、新規スタートアップの増加と市場競争を促進する案」である。

 つまり、「次世代の科学技術でイノベーションを生み出すには、巨大IT企業の解体が必要」 というのが彼女の主張である。その方法としては、企業による「競合の買収」「プラットフォームによる囲い込み」による一極集中を”過去に遡り禁止”にすることで、巨大IT企業による寡占状態の改善を掲げている。また現行のアメリカ司法省も反トラスト法違反疑惑で捜査している[Bloomberg]。 自主的な分割を要求する動きもあるが[ロイター通信]、政治的な圧力が高まらなければ不可能である。

具体的なGAFA分割案は、ウォーレン氏がブログで公開している[Medium]

Amazon ⇒ Whole Foods(米スーパー大手), Zappos(アパレル)の分離
・Google  ⇒ DoubleClick(広告), Nest(ハードウェア)の分離
・Facebook ⇒ Instagram(SNS), WhatsApp(メッセンジャー)の分離


 次期大統領選挙が始まる頃(2020年11月)には、巨大IT企業に対して社会の関心が集中する。既に問題となる「少なすぎる納税額」に関して解決できていなければ、民主党候補者の恰好の標的となる。G20でも「デジタル課税」に関するルール作りが開始されており、国際企業は各国で支払うべき「納税」に関して、早急な対策が求められている。

 そしてウォーレン氏が大統領になった場合、アメリカ経済は大きく変わる。トランプ大統領と正反対の経済政策(消費者目線)と財政健全化により、経済の成長路線は頓挫する可能性が高い。2019年までのアメリカの株価上昇は、国債や社債を増やすことで、経済を好循環させる資金を投入できているからに過ぎないからだ。

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