仮想通貨の将来:PoSと世界経済【後編】

1.マイナーの影響力

 マイナーの影響力についても、各企業で投資の判断基準が異なるため、簡単に相関係数をとるのは難しい。ただ今後のトレンドを予想する上で大切になる。
 特に2019年は根拠のない仮想通貨相場の予想により、マイニング業者の参入が相次いだ。これにより売り圧が上昇し、需要より供給量の増加が仮想通貨の低迷を誘発する。それは「金」であっても、採掘量が増えれば価格は低迷する。

⇒ 仮想通貨の将来:ハッシュレート分析【前編】

2.ビットコインの構造上の問題

① PoWという問題

 ビットコインの構造上の問題点について取り上げる。”構造上の問題点”としてブロックサイズ( ビットコインのスケーラビリティ問題を参照)が話題になるが、そもそも根本的な問題はPoW(Proof of Work)という仕組みにある

まずPoWについて 簡単に説明し、システムの問題点について解説していく。

 PoW(Proof of Work)とは、簡単に言えば ”マイニング作業 (PCによる演算) を行うことで、BTC取引の正当性(本物 or 偽物?)を検証し、OKなら取引を承認している。その報酬として、マイニング者には『新規発行コイン+取引手数料』が支払われるシステム”である。

 ここで重要となるのが、マイニングによる報酬(新規発行コイン+取引手数料)である。「金」の採掘とマイニングが根本的に異なるのは、マイナー達は鉱脈という偶然性もなく、報酬を得らえる点である。

つまり価格上昇すれば更に資金投入して採掘スピード(ハッシュレート)を引き上げれることで、確実に報酬が増えるのだ。価格上昇は結果的にマイナー達の売り圧の上昇を引き起こし、相場価格に”見えない天井”を築いている。

BTCのブロックサイズの変更(BCH・BSVへのハードフォーク)や、1ブロック内に含まれるデータ量を増やす取り組み()は、表面的な問題解決手段に過ぎない。これを解決するには、PoWに代わる新システムへの移行しかない。

PoSという解決策

 PoS(Proof of Stake)は、現行の法定通貨が採用している”金利”やFX(為替取引)でいう”スワップポイント”に似たシステムである。保有資産に対して決められた金利(報酬)が新規発行コインで支払われる。取引の検証作業にマイニング不要で、大量コインを保有するユーザーが検証作業を行うことで、コイン価値を下げる不正行為を出来ないようにしている。

 そのためPoSでは、仮想通貨を「より長く・多く保有した者」が利益を得られることで、売り圧が減少する。また多く保有したいために、需要も伸びる。当然、保有資産が多いほど利益を得られるといったデメリットもあるが、PoWよりは相場のボラティリティも落ち着く可能性がある。

 実際、イーサリアム(ETH)が来年にはPoSへ移行する予定であり、非常に期待できる。現段階は仮想通貨の取引手数料から収入を得ている取引所についても、PoSが広く採用されることで、将来的には銀行としての役割を担う可能性がある。PoSは仮想通貨の需要を回復させる起爆剤になる。

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