Binance取引制限の真意(日本で現地法人の可能性)

2.金融庁の圧力

 2017年4月、国内では改正資金決済法の施行され、仮想通貨交換業を行う業者は金融庁への登録が必須となった。海外取引所であっても、日本国内の居住者向けにインターネットで取引を行う場合も同様である。このため、Binanceはインターネットを通じて無登録で仮想通貨交換業を行なったとされ、金融庁から注意喚起を受けていた。

 過去に CZ氏は「2018年1月までは日本の金融庁への登録を目指し日本支社の設立に積極的な姿勢を見せていましたが、金融庁による警告を受けて以降は日本進出の計画を白紙に戻した」と発言しており、日本法人化も視野に入れていたが挫折している。(今回の一件とも、密接に関連する)

 今のタイミングを狙ったのは、 日本では2, 3月が所得税の申請時期の前に手を打った形となる。特に 金融庁としては税金の申告漏れや、意図的な「脱税」を危険視している可能性が高い[図3]。国内でも仮想通貨の取引額は年々増えているが、海外取引所を経由した場合、国税局では追跡できなくなるからだ。

この問題を解決するには、国の法律が効力を発揮する現地法人化しか解決手段はない。前例(アメリカ)では、Binanceは当局の訴えに応じ、2019年9月12日以降はBinanceサイトへのアメリカ国内からのアクセス(IPアドレス判断)をシャットアウトした。またアメリカ国内からの取引停止後の2週間後、Binance.USへの登録が開始されている。ただしアメリカでは州により法律が違うため、ニューヨーク州など13州は除外されている。

 

図3. 国内で増える取引額と、脱税を防止する体制構築(朝日新聞)

  

3.日本法人が取り扱う通貨について

 著者も日本でBinance取引できれば嬉しいが、そうは問屋も卸さない。前例となるアメリカでの取り扱い通貨を見れば、国内で許可される銘柄も分かる。まず9月に開設された当時の取り扱い銘柄は6種類だけだった。その後、順次追加されていき26銘柄となる。12月に更に追加され、現在では44銘柄となった。

【Binance US】
~2019.9 開設当時
ビットコイン(BTC), イーサリアム(ETH), リップル(XRP), ビットコインキャッシュ(BCH), ライトコイン(LTC), テザー(USDT)

その後、 ステラ(XLM)やダッシュ(DASH) など26銘柄が順次追加

~2019.12に追加上場
セーラーネットワーク(CELR), ディークレッド(DCR), エンジンコイン(ENJ), ファントム(FTM), アイコン(ICX), アイオーエストークン(IOST), コモド(KMD), オミセゴー(OMG), ハーモニー(ONE), オントロジー(ONT), レン(REN), ステータス(SNT), シータ(THETA), トモチェーン(TOMO), トロン(TRX), ネム(XEM), テゾス(XTZ), ヘデラ・ハッシュグラフ(HBAR)

Coindeskより引用( https://www.coindeskjapan.com/30952/ )

 アメリカ法人では銘柄の追加を順次行えたが、日本でも同様に銘柄を追加出来るかは不透明である。国内で認可を受けた取引所では、銘柄が多くて11種類(Coincheck)だからだ。また、先日発表された「仮想通貨FXのレバレッジの上限を下げる」ことからも、いかに国内情勢が仮想通貨に対して否定的かは見て取れる。

4.まとめ

 Binanceが日本で現地法人化する可能性について触れた。その意図としては、日本当局からの圧力があり、アメリカのように現地法人化することで圧力を避ける狙いがある。またユーザーを現地の法律に従わせることで、Binance側としても「脱税の幇助」の否定と、「利用層の増加」からメリットしかない。国税局からしても、ユーザー側の資金移動を全て把握できるため、容易に「脱税」をピックアップできる体制が整う。

 今後、Binanceは日本法人化によりKYCの強化や、経営やユーザー収益の透明化を図る可能性が高い。ある意味で、仮想通貨の認知度や信頼性は増すが、資産運用の自由度の高さで選択した既存ユーザーにとってはデメリットでしかない。もしBinanceを利用しているヘビーユーザーは、資金移動の規制(IP監視)が始まる前に、資金移動をすることをお勧めする。

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