② 香港デモに対する無言の経済圧力
中国政府としては、リブラのような基軸通貨の主役となるデジタル通貨への移行を目指している。しかし邪魔なのは、世界中で流通しているブロックチェーンを用いた仮想通貨だ。
日本国内で取引所で扱っているのは、10種類程度しかないが、世界ではマイナーなものまで含めると2000種類以上のアルトコイン(BTC以外のコイン)があるとされる。機能や用途も様々なものが市場に既に流通しており、本来であれば今更新しい通貨は必要ないのである。また香港のデモ参加者たちは、政府の資本規制対策として、銀行に預けていた通貨”元”から”仮想通貨”へ資金移動させていた。
中国政府としては、香港でデモが発生する度に、社会主義の継続性だけでなく通貨の面でも悩まされていた。このため、経済的な側面からもデモ鎮圧に乗り出したのが、建前として「仮想通貨への熱狂的な投機活動の制限」での規制強化だ。これにより香港自治区でデモ参加者への実質的な経済政策を始めたといえる。この影響により一時は価格が110万円近くまで回復していたBTCも、60万円代まで下落した。
3.まとめ (今後どうなるのか?)
中国政府の政治的な圧力により、仮想通貨市場が大きく影響を受けた。しかし、世界情勢や時代の流れは一国の政策では変えられないと考えている。
仮想通貨に関しても同様で、2017年9月にもICO(Initial Coin Offering)や中国国内の取引所を規制している。その後、2017年12月に仮想通貨が史上最高値を更新したことからも、一時的には下落したが、仮想通貨市場への影響は限定的であった[図4]。
今後、世界経済の状況 (株価下落など) が悪化した時に、仮想通貨の本来の価値や役割が発揮されると考えている。