② 増える負債額
アメリカ政府の負債額は、現在22兆ドル(約2400兆円)まで達している。日本の負債額(1300兆円)を遥かに越えている。GDPで比較すると、 アメリカが日本より約4倍大きい規模であるため、負債額が多いのも当然ともいえる。実際、アメリカの負債額を対GDP比でみると104%程度であり、全く問題ないように見える。
しかし、アメリカ政府の負債が問題なのは、資金調達先が”国外”であることだ。
日本の場合、国内(日銀含む地方銀行など)から資金調達を行うことで、タダ同然で借金を増やしている。また国外の購入者は10%にも満たない。そのため、負債額に対して利払いを大きく抑制できている(結局は国民が負担するのだが…)。
2016年時点でのデータになるが、対外負債額をグラフにしてみると一目瞭然である。 アメリカは18兆ドル(約2000兆円)にも及ぶ負債を自国以外から賄っており、断トツで多い[図2]。
国外から資金調達する場合、日本のようには上手くいかない。利払いが発生するので、返済額はかなり大きくなる。 2018年以降、拍車を掛けるように、 トランプ政権に交代してからは景気刺激策として「法人減税」を積極的に行っており、右肩上がりで負債は増加し続けている[参照]。
現段階では国家予算から支払えるのでいいが、負債返済や景気刺激のために大量の通貨ばら撒き (MMT) 始めると、一気に通貨価値は下落する可能性がある。ドルを外貨準備として持つ国としては、最悪のシナリオである。
中国の外貨準備高は米ドルと金の保有量によって決められている。2011年時点では、米ドルの保有量が7割で金保有量は僅か3割(600トン)程度であった[参照]。しかし、2019年時点では既に金を1800トン近くまで増加させ、米ドルや米国債の保有量も軒並み減らしている[参照]。
以前の記事でも書いたが、昔から「金」は有限であるために、ハードマネーとして資産価値が担保されてきた。ゆえに現段階では世界的にシェアの大きい基軸通貨からの経済的影響を減らす目的で、金保有量を増加させていると考えられる。通貨価値が経済に左右されやすい新興国でも同様の動きが出ている。
2.中国の思惑
① 世界的な基軸通貨への憧れ
中国側としてはドル離れを加速させ、自国の通貨が基軸通貨になることを目指している。その構想となるのが、一帯一路計画だ。一帯一路は中国からヨーロッパに掛けての”一帯”と、中国沿岸部から東南アジア、アラブ諸国沿岸、アフリカ大陸にかけて結ぶ”一路”を指し、大規模経済圏を計画している。
経済圏を創造していくうえで大切となるのが、多国籍間で使用可能な基軸通貨である。現時点では、国際送金には数日(早くて1-2日)必要となる。単一通貨もしくはブロックチェーンを使用したデジタル決済システムであれば、リアルタイムに近い取引が可能となる。これは経済的にインパクトが大きい。
最近では、Facebookが「リブラ」という仮想通貨を発表したのは、記憶に新しい。リブラは世界的な基軸通貨を目指して構想されており、多国籍間での資金移動の簡便化を図る目的で設立される予定だった。そのため中国政府も脅威に感じて積極的に批判してきたのだが、結局はアメリカ議会や世界中から批判を浴びて、流通する前の段階で頓挫している。
この間にも中国政府はブロックチェーンを備えたデジタル人民元の発行を、着々と進めているのが現状だ。